2008年02月19日

通訳者を育てるのは難しい

IJET関係の仕事を黙々としていたら知り合いのエージェントから電話がきた。なんと予定されていた通訳者がドタキャンしたので、私に入ってほしいとのこと。困った時はお互い様なので、さっと用意して現場のホテルへ向かう。それにしても仕事をドタキャンするとはけしからん奴だ。

仕事自体は楽なビジネス・ミーティング。そんなに専門的な話でもなく、いたって和気藹々な雰囲気。これくらいのレベルなら、平均的な通訳学校の中級くらいでも対応可能だと思う。ではなぜドタキャンしたのか?

後でエージェントに事情を聞いてみたら、この人物はそもそも通訳者としてあまり現場経験がない上に、前日には簡単なアテンド通訳として受けた依頼が化学の専門用語満載のハードな仕事になり、精神的トラウマから電話も取らなくなったとのこと。実はこれ、通訳者の卵にはよくある話だ。

外国語に長けていて、通訳力も申し分ない人でも、現場のプレッシャーに耐えられずに潰れていく人は結構いる。ベテラン通訳者であれば相手の言いたいことをある程度予測したり、長いコメントはメインアイデア捉えてアレンジしたり、どうしても定訳が分からない用語はとりあえず意味が伝わるようにアドリブしたり、つまり小技を駆使することで苦境を切り抜ける術を知っているが、経験が浅い人は現場の重い雰囲気(大半は通訳者が重くしている場合が多い)に押しつぶされて何も言えなくなってしまうことがある。練習・訓練の成果を出す前に頭が真っ白になってしまい、気付いたら外されていた、という話もたびたび耳にする。

プレッシャーに対するある種の対応力(鈍感力?)は優秀な通訳者の特性だと思う。これは度重なる練習・訓練と適度な現場経験によって育まれるものかもしれないが、先天的な特性でもあると思う。生まれつき、追い込まれて力を発揮するタイプの人も実際いるからだ。私はどちらかといえば、周りの空気に鈍感なので、あまりプレッシャーを感じないタイプ。現場で極限まで追い込まれることは滅多にない(初めての法廷通訳はさすがに重圧だったが)。

簡単な仕事のはずが一瞬にして専門的な内容に豹変してしまうのがこの仕事の不思議な点であり、魅力的な点でもある。でも有能な若者がいきなり厳しい現場に放り込まれて挫折してしまわないように、エージェント側も細かな配慮を忘れてはならないと思う。

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この記事へのコメント
なるほど〜!
Posted by 知念亜美 at 2008年03月02日 13:13